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アレルギーの病気についてQ&A

蕁麻疹

Q1 蕁麻疹の原因にはどのようなものがありますか

A

蕁麻疹は、一部の例外を除き、ほとんどのものが皮膚の中にあるマスト細胞と呼ばれる細胞が活性化されることにより症状が起こります。マスト細胞を活性化する刺激としては、アレルギーの原因となる物質、薬剤、皮膚をこすることや温度の変化、皮膚を日光にさらしたり、汗をかいた時などがあります。しかし、蕁麻疹の中で最も多く発生する特発性の蕁麻疹は、明らかな刺激なく症状を繰り返すことが特徴です。このタイプの蕁麻疹の要因としては、疲れ、ストレス、細菌やウイルスの感染、マスト細胞を活性化する自己抗体の存在などが知られています。しかし、これらがどのようにして特定の人に、またある時間にのみマスト細胞を活性化するのかということは、まだ良くわかっていません。そのため、蕁麻疹の原因とは一つではなく、いくつかの要素が組み合わさって一定以上のレベルにまで達した時に症状が現れると考えられます。血管性浮腫と呼ばれる、まぶたやくちびるなどが突然膨れあがって2,3日かけて消える病型では、長く飲んでいる高血圧の治療薬の一種や遺伝子の異常が原因となっていることもあります。

Q2 蕁麻疹にはどのようなタイプがありますか

A

蕁麻疹は、大きく4つのグループに分けられます。明らかな原因がなく自発的に症状が現れる特発性の蕁麻疹、特定の刺激により症状が出る刺激誘発型の蕁麻疹、目や口などの皮膚、粘膜が腫れ上がる血管性浮腫、そして蕁麻疹関連疾患です(表)。刺激誘発型の蕁麻疹の中には、特定の食べ物や薬などで症状が現れるアレルギー性の蕁麻疹、アレルギーではない薬剤による蕁麻疹、特定の物理的な刺激により現れる物理性蕁麻、発汗刺激により起こすコリン性蕁麻疹などがあります。物理性蕁麻疹では、皮膚が擦れた時に現れる機械性蕁麻疹、冷たいものに触れて起こる寒冷蕁麻疹、日光に曝されて起こる日光蕁麻疹などが主な病型です。なお、これらは一つだけが現れる他に、患者さんによっては複数の蕁麻疹の病型を併せ持っていることも少なくありません。

表.蕁麻疹の主たる病型
I.特発性の蕁麻疹
  1. 急性蕁麻疹
  2. 慢性蕁麻疹
II.刺激誘発型の蕁麻疹
(特定刺激ないし負荷により皮疹を誘発することができる蕁麻疹)
  1. アレルギー性の蕁麻疹
  2. 非アレルギー性の蕁麻疹
  3. アスピリン蕁麻疹(不耐症による蕁麻疹)
  4. 物理性蕁麻疹(機械性蕁麻疹、寒冷蕁麻疹、日光蕁麻疹、温熱蕁麻疹、遅延性圧蕁麻疹、水蕁麻疹、振動蕁麻疹(振動血管性浮腫))
  5. コリン性蕁麻疹
  6. 接触蕁麻疹
III.血管性浮腫
  1. 突発性の血管性浮腫
  2. 外来物質起因性の血管性浮腫
  3. C1エステラーゼ阻害因子(C1-esterase inhibitor;C1-INH)の低下による 血管性浮腫(遺伝性血管性浮腫(hereditary angioedema;HAE)、 自己免疫性血管性浮腫など)
IV.蕁麻疹関連疾患
  1. 蕁麻疹様血管炎
  2. 色素性蕁麻疹
  3. Schnitzler症候群
  4. クリオピリン関連周期熱(CAPS:cryopyrin-associated periodic syndrome)
(日本皮膚科学会雑誌121: 1339-1388, 2011より引用)

Q3 蕁麻疹にはどのような検査がありますか

A

蕁麻疹の検査は、詳しい問診(患者さんのお話しを聞く診察のこと)に基づいて行われます。皮膚症状が、いつも特定の食べ物を食べた後や行動、場所に限って現れる場合は刺激誘発型の蕁麻疹が考えられます。その中には、アレルギーが関係しているものも含まれます。アレルギーが関係している場合は、血液検査が一般的ですが、疑われる物質で皮膚を刺激して調べることもあります。食べ物、薬剤、運動などの関連が疑われる場合は負荷試験、つまり、疑われる刺激を患者さんに加えて実際に症状を起こす試験が行われることもあります。蕁麻疹以外に発熱、体がだるい、疲労感がある、関節が痛む、胃が痛む、などの症状がある場合は、それぞれの症状に基づく血液検査や、胃の検査などが行われることもあります。しかし、蕁麻疹では最も頻度の高い、自発的に症状出現を繰り返す特発性の蕁麻疹の場合は、今のところ原因や重症度を調べるための検査はありません。ただし、特発性の蕁麻疹でも、一カ所の皮膚症状が1日以上消えない場合は皮膚の一部を採って顕微鏡で調べる皮膚生検が行われることもあります。また、繰り返しまぶたやくちびる、あるいは喉が腫れて息苦しくなる血管性浮腫という病型の場合は、遺伝性か否かを見分けるための血液検査が行われることがあります。

Q4 蕁麻疹の薬物療法について教えてください

A

蕁麻疹の治療の基本は原因・悪化因子の除去・回避と、抗ヒスタミン薬を中心とした薬物療法です。発症初期の特発性の蕁麻疹では2,3日間抗ヒスタミン薬を内服し、症状が現れなければ徐々に薬の量を減らします。発症後の時間経過が長いものでは、症状が出なくなってから後に、もう少し長く内服を続けます。具体的には、発症後1~2ヶ月間経過したものでは1ヶ月間、2ヶ月以上経過したものでは2ヶ月間を目安として、症状が現れないように抗ヒスタミン薬を飲み続けます。一方、一種類の抗ヒスタミン薬では症状が治まらない場合は他の薬に変更、追加、またはそれまで飲んでいた薬の量を増やすなどのことが行われます。急性期には、副腎皮質ステロイドの内服または注射が併用されることもありますが、副作用を避けるため、原則として何週間も続けては使われません。まれに、痛み止めや高血圧の治療薬が蕁麻疹、血管性浮腫の原因になっていることがあるので、注意が必要です。蕁麻疹には、一般的につけ薬の効果は期待できないので使いません。また、遺伝性の血管性浮腫の発作にはC1インヒビターの点滴または静脈注射、アナフィラキシーを起こしている場合はアドレナリンの筋肉注射が必要です。妊娠中、特に妊娠2ヶ月に相当する時期までは、安全性の視点から飲み薬は使わないことが望まれます。しかし、いくつかの抗ヒスタミン薬は妊婦が飲んだ経験が蓄積しており、必要に応じて使われることもあります。

Q5 蕁麻疹はどのくらいでなおりますか

A

蕁麻疹がいつ治るかは、人により、また蕁麻疹のタイプによりかなり大きな開きがあり、一人一人の蕁麻疹が治る時期を予測することはできません。ただし、明らかな誘因なく、自発的に症状が現れる特発性の蕁麻疹の90%以上は1年以内に治ると考えて良い様です。また、発症してからの日数が長いほど、そしてこどもよりもおとなの方が、治るまでに長くかかる傾向があります。一方、蕁麻疹の重症度と治るまでにかかる日数の関係は無いようです。発症後6週間以上経っても一種類の抗ヒスタミン薬で症状が治まらない慢性蕁麻疹の経過を調べた研究では、治癒、つまり、無治療でかつ症状が現れない状態に至るまでの期間が平均で約6年(73ヶ月)であったことが報告されています。しかし、その報告では、治療を始めて2年後には、半数以上の人が一種類の抗ヒスタミン薬を飲んでいれば症状が現れない状態になっていました。また、発汗刺激により症状が現れるコリン性蕁麻疹は10代から20代の人が多く、ほとんどの人は30代前半までに治るか、ほとんど気にならない程度まで良くなるようです。エビやカニなどの甲殻類、あるいは野菜や果物を食べて症状が現れるアレルギー性の蕁麻疹についてはほとんど研究がなく、今のところ具体的な数値を挙げることができません。

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