食物アレルギーの症状は表1に示すように非常に多彩です。ただし、これらの症状・疾患の原因のすべてが食物アレルギーではないことに注意して下さい。症状・疾患によって食物アレルギーが関与する頻度は大きく異なっています。
食物アレルギーの症状で最もよくみられるのは皮膚です。約90%の患者さんは皮膚の症状を示します(図1)。
即時型の症状を呈する患者さんの約10%がアナフィラキシーという、全身蕁麻疹、喉頭浮腫、呼吸困難、血圧低下、意識障害といった重篤な全身症状を呈します。稀ではありますが生命にかかわることもあります。詳しくは「アナフィラキシー」を見て下さい。
小児期のアトピー性皮膚炎では食物特異的IgE抗体が高率に証明されますが、単純な即時型反応とは異なる反応です。IgE抗体が関与する非即時型反応という説明がなされています。食物が関与したアトピー性皮膚炎は2歳以下に多く、加齢とともに関与する頻度が減少していきます。
原因となりやすい食品の順位は、頻度が高い食品から卵、乳製品、小麦、甲殻類(エビ、カニ)、果物類、そば、魚類、ピーナッツ、魚卵(いくら)、大豆、木の実の順です(図2)。
また、年齢によって異なります。6歳までは鶏卵、乳製品、小麦が多く、その後は加齢とともにそば、甲殻類(エビ、カニ)、果物、魚介類などが増えます(表2)。欧米ではピーナッツが最も多い原因アレルゲンです。日本でもピーナッツアレルギーの患者さんが増える傾向にあります。
しかし、原因食品は個人個人で異なります。自分の原因の食品を明らかにして対応してください。
口腔アレルギー症候群は、食物の摂取によってひきおこされ、唇や口の中にかゆみ、ヒリヒリ感、腫れがみられます。時にのどがしめつけらる感覚が生じたり、稀にアナフィラキシーをきたすこともあります。
原因食物は果物・野菜が主です。また、花粉症を合併することが多いことも特徴です。これは果物・野菜の抗原と花粉抗原との間に共通抗原性が存在するためです。
花粉 | 果物・野菜 |
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シラカンバ | バラ科(リンゴ、西洋ナシ、サクランボ、モモ、スモモ、アンズ、アーモンド)、セリ科(セロリ、ニンジン)、ナス科(ポテト)、マタタビ科(キウイ)、カバノキ科(ヘーゼルナッツ)、ウルシ科(マンゴー)、シシトウガラシ、等 |
スギ | ナス科(トマト) |
ヨモギ | セリ科(セロリ、ニンジン)、ウルシ科(マンゴー)、スパイス、等 |
イネ科 | ウリ科(メロン、スイカ)、ナス科(トマト、ポテト)、マタタビ科(キウイ)、ミカン科(オレンジ)、豆科(ピーナッツ)、等 |
ブタクサ | ウリ科(メロン、スイカ、カンタロープ、ズッキーニ、キュウリ)、バショウ科(バナナ)、等 |
プラタナス | カバノキ科(ヘーゼルナッツ)、バラ科(リンゴ)、レタス、トウモロコシ、豆科(ピーナッツ、ヒヨコ豆) |
食物アレルギー診療ガイドライン2012(作成:日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会)より転載
乳幼児期に発症した食物アレルギーは年齢とともにその症状は軽快することが多いのですが、いつ治るかは個人差がありますし、原因食品によっても異なります。
一方、年齢が大きくなってから発症した場合やソバ、ピーナッツ、エビ、カニに対してアレルギー症状をおこした場合は、軽快することは少なく、長期間にわたって原因食品を除去します。
赤ちゃんにもアレルギー疾患が出やすい体質がうけつがれているかもしれませんが、離乳食を開始する時期は、普通の赤ちゃんと同じで構いません。