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アレルギーの病気についてQ&A

アトピー性皮膚炎

Q1 スキンケアはどのように行えばいいのですか?

A

皮膚を清潔に保つために、毎日の入浴、シャワーに心がけましょう。
以下に要点を列記します。

  • 汗や汚れは速やかに洗いおとしましょう。でも、強くこすらないようにしましょう。
  • 洗浄力の強い石けん・シャンプーを使用するのは避けましょう。
  • 石けん・シャンプーはよく泡立て、素手でしわを伸ばして丁寧に洗いましょう。
  • 石けん・シャンプーが残らないように十分すすぎましょう。
  • 痒みを生じるほどの高い温度の湯は避けましょう。
  • 入浴中・後にほてりを感じさせる沐浴剤・入浴剤は避けましょう。
  • できれば1日2~3回の入浴・ シャワーで表皮表面の細菌の繁殖を防ぎましょう。
  • 風呂から上がる前に水をかぶると、体表温度が下がり痒みも押さまることがあります。
  • 入浴後には、必要に応じて適切な外用剤を塗布しましょう。
  • 入浴・シャワー後は速やかに保湿剤を塗付しましょう。入浴後の乾燥防止に有用です。
  • 保湿剤は市販のものでも構いません。使用感のよい保湿剤を選択してください。
  • 軽い皮膚炎は保湿剤のみで改善することがあります。

爪を短く切り、なるべく掻かないようにしましょう。手袋をはめたり、患部を包帯で保護して、ひっかき傷を作らないようにしましょう。

Q2 ステロイド外用剤の副作用について教えてください。

A

症状に合った強さのステロイド外用薬を正しい量をぬっていれば、広い範囲の副作用はほとんどみられません。

注射や飲み薬は全身にはたらくため、全身性の副作用が現れますが、ぬり薬は皮膚の患部に直接はたらくため、皮膚から吸収されても血中に入る量はきわめて少ないのです。通常の使用量であれば、全身性の副作用は現れません。
ぬり薬による副作用の多くは、薬をぬった部分の限られた場所に対するものです。こうした部分への副作用は、ステロイドの副作用の中でも軽い副作用に分類され、「薬をぬった部分に毛が増える」、「皮膚が赤くなる」、「毛細血管が拡張する」、「皮膚がやや薄くなる」などがあげられます。その他、「にきびの悪化」、「かぶれ」、「とびひ、みずむし、ヘルペス、ミズイボ(※註1)がまれに悪化する」といった症状もみられますが、医師の指導のもとに適切な対処をしていけばほとんど元に戻る心配のないものです。
また、「ステロイド軟膏をぬると肌が黒くなる」と言う人がいます。じつは、ステロイドは皮膚の色素の生成を抑えるため、肌の色はむしろ白くなります。アトピー性皮膚炎は皮膚の炎症ですので、ちょうど日焼けの炎症が治ると肌が一時黒くなるように、アトピー性皮膚炎も炎症がおさまった後は色素沈着が起こります。これがステロイドの副作用だと誤解されているようですが、実はもうしばらく根気強くステロイド剤を使っていくことで、健常な皮膚に戻っていきます。
薬の副作用については、医師や薬剤師にぜひおたずねください。副作用への不安や誤解を解消し、薬と上手につきあっていきましょう。

※註1
「ミズイボウィルス」:
正式名称「ポックスウィルス」。

Q3 プロトピック軟膏について教えてください。

A

プロトピック軟膏はステロイドホルモンではないので、ホルモン作用による副作用はありません。皮膚からの吸収率が低いのでステロイド軟膏に比べると効果が弱めです。使用量の制限を守りましょう。

プロトピック軟膏はステロイドホルモンではない免疫抑制薬ですので、ステロイドホルモン作用による血管拡張・皮膚萎縮・多毛などの副作用がありません。欠点は顔や首の病変にはよく効きますが、体や手足の病変には効きにくいことです。これはプロトピック軟膏の皮膚からの吸収率(経皮吸収)が低いせいです。また、ぬったところがヒリヒリしたりほてったりするのも困ります。しかしこのヒリヒリ感は3、4日ぬり続けるとおさまってきます。一方、患者さんの中にはプロトピック軟膏だけで皮膚炎を良好にコントロールできるので、ほとんどステロイド軟膏を使用しなくてもいい人もいます。
プロトピック軟膏を使用する上で、2つの留意点があります。一つは、2歳未満の乳幼児には使用できないことです。これは2歳未満の乳幼児に対するしっかりとした臨床試験が行われていないためです。それから、1回使用量が体重10kgあたりおよそ1g以下に制限されていることです。1日2回までぬることができますので、体重10kgの幼児では、朝1g、入浴後1gぬれることになります。1gは少ないと思われるかもしれませんが、1gで成人の手4枚分の患部にぬることができますので、実は十分量です。この制限量を守っていれば、経皮吸収されたプロトピックが血中で連続して検出されることはありませんので安心です。
説明書には、プロトピック軟膏によるリンパ腫発生の可能性が書いてあります。大量にぬり続けると、血中にプロトピック軟膏が検出できるようになるのは当然です。上記のように、使用制限量を守っていれば安心です。日常診療での通常の使用では使用制限量を超えることはまずありません。皮疹が広範な場合でも、まずステロイド軟膏を使用して皮疹を軽快させてから、プロトピック軟膏に移行しますので、制限量以上の使用に至ることはありません。
紫外線に対する注意も必要です。海水浴・スキー・運動会・遠足などのように日光に過度に当たる日には、プロトピック軟膏はぬらないでステロイド軟膏をぬるようにしてください。通常の通学や遊びの時は外用していただいてかまいません。

Q4 食事療法は効果がありますか?

A

アレルゲンと確認されているものは、避けるべきと考えます。 必ず食物アレルギーに精通した医師または専門の医師に相談してください。
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Q5 民間療法やマスコミで勧められている治療法は効果がありますか?

A

まれに症状が良くなることはありますが、「治る」ことはありません。

よく「○○がアトピーに効いた!」、「△△でアトピーが治った!」という広告を目にしますね。しかし、それは間違いです。特に「アトピー性皮膚炎を起す体質が治る」、「完全に治る」というのは誇大広告です。ある人には効果があっても、必ずしも自分にも効くとは限りません。アトピー性皮膚炎は、長期慢性疾患です。良くなったり悪くなったりを繰り返す体質は変えられなくても難病ではありませんから、標準治療のコントロールのコツさえつかめば、適切な軟膏療法で、見た目では全く分からないほど症状をきれいにして、普通に暮らすことができる疾患です。
民間療法の種類は主に(1)体質改善、(2)乾燥肌の改善、(3)皮膚の殺菌・浄化、(4)炎症をおさえる効果に分けられます。(1)については、体質は遺伝に関わることなので、簡単に改善することはできません。
(2)は、たとえば乾燥肌用の保湿効果をうたっているものであれば、かぶれなど悪い影響がなければ、使用しても問題はありません。
しかし、多くのものは(4)の効果も同時にうたっており、ステロイド剤の代わりに使うことを宣伝していたりします。本来、体の中で炎症をおさえる働きをするステロイド剤を使わず、これだけで治そうとすると、かえって症状がひどくなるのです。
また(3)についてですが、健康な人の皮膚には常に菌はついています。ですから、けっして菌をゼロにする必要はありません。普通に入浴をして、低刺激性の石けんで強くこすらずに洗って皮膚を清潔に保てばよいのです。殺菌をするだけでアトピー性皮膚炎が良くなることはないのです。
民間療法のすべてが悪い、効かないというわけではありません。肌の保湿に関しては効果があり、患者さんの使用感もよく、症状に悪影響を与えるものでなければ、通常の治療法に加えることも可能です。ただし、その際には必ず医師と相談してください。

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