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アレルギーの病気についてQ&A

花粉症

Q1 どんな花粉によって花粉症は引き起こされますか。

A

花粉症を引き起こす花粉は数十種類以上知られています。大別すると樹木花粉、草本花粉、ブタクサなどです。図2は代表的な花粉とその飛散地域、飛散時期を地域ごとに示したものです。地域により大きく異なりますが日本での花粉症の特徴はなんといってもスギ花粉症です。ただ、スギ花粉飛散は沖縄には見られず、北海道も南部の函館などに限られています。北海道では樹木花粉症としてシラカバ花粉による花粉症がみられることが特徴です。ヒノキは関東以西に広く分布していますが、特に西日本ではヒノキ花粉飛散数はスギ花粉飛散数を上回っているところが少なくありません。これらの花粉の飛散時期は地域により違いがあります。また、花粉がどのくらいの距離まで飛散するかは花粉の種類によって大きく異なり、スギでは数十キロメートル以上の飛散があるとされていますが、カモガヤ、ヨモギなどの草本花粉は数十メートル、せいぜい飛んでも数百メートルといわれています。ご自分の住んでいらっしゃるところでどんな花粉がいつごろ飛んでいるのかを知っておくと役に立ちます。

Q2 どんな症状がみられますか。

A

花粉症の患者さんが花粉の曝露を受けると、直ちに発作性にくしゃみ、鼻水、鼻づまりがみられます。これを即時反応といいます。眼のかゆみ、充血といった眼症状もほぼ必発です。さらに花粉に曝露されて7時間以降にその時点では花粉の曝露はないにも関わらず、鼻づまりが見られることがあります。これを遅発反応といいます。即時反応に続いていろいろな炎症が引き起こされその結果として引き起こされる反応と考えられています。実際には花粉の侵入、即時反応、遅発反応が連続的に繰り返されていることになります。花粉症では、鼻や眼症状以外にのどの症状(かゆみ、刺激感)、咳、胃腸症状(痛み、下痢)、顔などの露出部皮膚の発赤、かゆみ、さらに頭重感、頭痛などの全身症状を訴える患者さんも半数以上にみられ、軽いうつ症状も数%の患者さんでみられるといった報告もあります。特に花粉飛散のピーク時には鼻や眼症状以外にもいろいろな合併症がみられています。

Q3 花粉症の治療にはどんなものがありますか。

A

花粉症は、原因となる花粉が鼻に侵入してこなければ症状は起きませんから、治療の第1歩は原因花粉と接触しないことです。そのためには、花粉飛散情報を利用して外出や窓の開閉の工夫をして花粉曝露を避ける、マスクや眼鏡を利用して侵入する花粉の量を減少させる、職場、学校、自宅の中に花粉を持ち込まない、などの対策が重要です。しかし、完全に花粉曝露をシャットアウトするのは困難です。たとえマスクをしても呼吸や会話に伴ってマスクの隅から花粉は侵入してきます。その他、もっとも広く行なわれているのは薬物療法です。いろいろな特徴をもった薬剤がありますので症状に合わせて使うことで高い効果がみられますが、ただあくまで症状を抑えるもので、根本治療にはなりません。現在唯一根本治療の可能性を持つのは特異的免疫治療(減感作療法)と呼ばれるものです。さらに、薬物などの治療に改善がみられない方には手術治療も検討されます。治療に当たっては当然ですが、ご自分の症状や困っていることを正確に伝え的確な治療、アドバイスを受けるためにも医師とのコミュニケーションを十分に取ることが大切です。

Q4 花粉症の治療にはどんな薬物が用いられるのですか。

A

花粉症の治療には様々な特徴をもった薬剤が使われます。もっとも広く用いられているのは抗ヒスタミン薬というものです。内服が多いですが鼻への噴霧薬としても使われます。くしゃみや鼻水に有効でかつ即効性があります。ただ、鼻づまりに対しては効果が落ちます。抗ロイコトリエン薬、抗トロンボキサン・プロスタンジン薬は特に鼻づまりに対して高い効果がありますが、効果が十分にみられるまで時間がかかります。ヒスタミンやロイコトリエンなどを化学伝達物質と呼びますが、これらの放出を防ぐ化学伝達物質遊離抑制薬、あるいはTh2阻害薬と呼ばれる薬は鼻づまりにも効果がみられますが、やはり効果の発現に少し時間がかかりますので、これらの薬は症状が強く発現してから単独で使用してもすぐに改善効果は得られません。鼻噴霧用のステロイド薬は効果が強く、くしゃみ、鼻水、鼻づまりのどの症状にも効果が見られます、1~2日で効果が出現し、スギ花粉症の症状がある程度強い方には不可欠で、多くの場合他の薬と組み合わせて処方されます。漢方薬は一般的には効果はマイルドでその発現にも時間がかかりますが、高い効果がみられる方もいらっしゃいます。これらの薬はいずれも副作用を生じる可能性があり、合併する疾患によっては投与が出来ないもの、あるいは他の薬との飲み合わせに注意が必要なものがあり、医師、薬剤師との相談が必要です。また一般的ではないのですが、花粉飛散ピーク時に症状が非常に強い方には短期間ステロイドの内服薬の投与、鼻噴霧用の血管収縮薬の投与が行なわれることもあります。ただ、これらは長期投与すると副作用の発現がみられ注意が必要です。

花粉症の治療薬
抗ヒスタミン薬
即効性がある(特にくしゃみ、鼻汁)
鼻閉に効きにくい
眠気や口渇を伴うものがある
化学伝達物質遊離抑制薬、Th2サイトカイン阻害薬
効果発現に時間がかかる(数日~2週間)
鼻閉にもやや効果
眠気や口渇はない
抗ロイコトリエン薬、抗トロンボキサン薬
特に鼻閉に効果が高い
効果発現に時間がかかる(数日~4週間)
点鼻ステロイド薬
強力で鼻閉、くしゃみ、鼻汁に有効
刺激になることがある
漢方薬
効果はマイルドで発現に数日は必要
著効を示す患者がいる

Q5 最近話題になっている舌下免疫療法とはどんな治療ですか。

A

アレルゲン免疫療法はアレルゲンを少量ずつ増量しながら投与し、アレルギー反応をおこしにくくする治療法です。ハウスダスト(ダニ)や花粉などのアレルギーを対象に、海外では100年以上の長い歴史があります。これまでは皮下注射でアレルゲンを投与していたため、痛みがあったり、稀ですがショック反応を起こす危険性がありました。 一方、舌下免疫療法は舌下にアレルゲンを数分間ためてから飲み込む方法で、自宅で投与でき安全性が高いことが特徴です。わが国ではスギ花粉症の舌下免疫療法薬が2014年10月から登録医療機関で処方可能になりました。これまで薬物療法しか行ってこなかった患者さんにも受け入れやすくなり、有力な選択肢が増えたと言えるでしょう。

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